薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~
だからこそ私は彼の手を取れずにいた。
彼が気を遣い差し出してくれた手を。
別に恐ろしかったからではない。ただ単に彼と自分の姿を比較し、とても恥ずかしくなったからだ。彼と私では実力的にも精神的にも差があり過ぎる。
彼もおそらく私と同じような家名を負っている。
なのに彼の力は桁違い。
おそらく毎日の鍛錬を欠かさなかったからなのだろう。どんな厳しい事にも堪えてきた結果なのだろう。
そう考えると、私はまだまだ未熟者。鍛錬をさぼり、逃げてきた私はダメダメな存在。だからこそこれから成長しなければならないのだ。
そうだ。
これからは姉に鍛えてもらおう。母親に教えてもらおう。
そう考え、私は彼の手を申し訳なさ気に払い、自ら断とうとした
が、
私の体は自分の意志関係なく、前へ倒れた。そのまままるでそうすべきかのように目を瞑った。