オトナの秘密基地
やっと至近距離で旦那様の顔を見ることができる。

少し緊張して、視線を合わせたら。


え……?

眼差し、輪郭、雰囲気。

あのマンションで見た、盛り塩を落とした男性とそっくりだった。

まさか、本人?

いや、本人にしては、残念なところが多い。

レトロすぎるビン底眼鏡と坊主頭が、ちっとも似合っていないんだもの。

これさえなきゃ、イイ男なのに……。


「大丈夫、です。
大丈夫だから、お願い、眼鏡を外して……」

「……?」

だって、髪の毛をすぐに生やすのは無理だけど、せめてその眼鏡を外せば、『盛り塩さん』並みの男前になるはずだもの。

そんなことは口に出せず、ただ、旦那様を見つめていたら、さらにお腹が張ってきた。

冷や汗が出るほどの張りで、目の前が暗くなる。

あ、貧血だ、と思った時にはもう、倒れていた。

旦那様の腕の中へ。

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