杏子の墓(ラジオドラマ)

杏子先生

小鳥のさえずり。
授業開始の鐘の音。
(杏子)「みなさん、おはようございます!」
(子ども達)「おはようございます!」

(杏子)「先生の名前は」
黒板にチョークで書く音。
(杏子)「しばやまきょうこ。きょうこ先生です!」
(子ども達)「わー、きょうこ先生!」
拍手の音、遠ざかり消える。

(若林のN)「その年の夏は以上に暑かった」
カモメの群れる声。ドラの音。霧笛。歓声。
船出の音遠ざかる。

(若林のN)「横浜からナホトカまで船。シベリア鉄道で
ハバロフスクへ出てイリュージンのジェット機でモスクワまで
36時間。秋口、凍えながらストックホルムに着いた。

ヒッチハイクでデンマーク、ドイツと南下してミュンヘン
からイスタンブール行きの国際列車に乗った。バスを乗り継いで
やっとの思いでインドにたどり着き、ベナレスで1ヶ月、

いろいろとものを考えさせられた。よし、ヨーロッパへ戻って
働こうと意を決した時、ふと柴山杏子のことを思い出し、
手紙を出して12月、インドを後にした」

セミのなく声。
(杏子のN)「その年の夏は異常に暑かった。2学期が
始まっても30度以上の猛暑が続いていた」

(杏子)「あいうえお、はい!」
(子ども達)「あいうえお!」
(杏子)「かきくけこ、はい!」
(子ども達)「かきくけこ!」
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