兄妹芸人(仮)

それから土曜日の本番まで、あっという間に時間が過ぎていった。

まさに「あっという間」をこの身で実感した5日間だ。



練習はもちろんのこと、他にも宣伝や衣装の調達など、なんとも慌ただしく過ごした。



衣装はまた、お姉さんのところで調達したわけだが、例によってもはや恒例となった撮影会もやらされ、今回も見事に着せ替え人形へと成り果てた。



そして、ついに明日。

あたしたちはまた、ステージへ上がる。




「明里、緊張してる?」


「…まぁ、それなりに」



なんて言ってみるが、実際はじっとりねっとり心臓を握られているみたいな嫌な緊張がある。



ステージへのトラウマは吹っ切ったつもりでいるけど、やっぱりそう簡単にはいかないか。




前回の文化祭のステージはあたしの中で完全にマイナスだ。


だって、結局頭真っ白になって自分がなにを言っていたかなんて覚えていないし、やりたいものをちゃんとできなかった時点であれはやっぱり失敗だったんだ。


みんながいくら褒めてくれても、あたしの中でその判定は覆らない。




だから、明日のステージが、あたしのこれからのスタートライン。




「大丈夫だよ。いっぱい練習したんだもん」


そう言って目を優しく細める慎太郎に、心臓の締めつけが少し緩むのを感じた。




「今度は最初から、ちゃんと隣にいてよね」



それだけであたしがどんだけ安心しているか、わかってんのかなこのポンコツは。








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