シュガーレス
「ちょっと…待って…!」
トイレを出てからずっと、手を引っ張り、ひきずるように歩かれている。
そんな私たちを見る、周りからの好奇な視線に、耐えきれず声を上げた。
それなのに、私の希望はあっさり無視。
むしろ歩くスピードが、どんどん早くなっている。
まだ頭が混乱してるのに、余計ついていけない。
「…透っ!」
そう叫ぶと、ようやくピタッと立ち止まった。
「何や?」
そう振り向く姿は、とても不機嫌そう。
いたたまれなくなって、私は頭を下げた。
「えっと…ごめん。」
「は?」
「あんなの透のせいじゃないし。
気にしなくていいから…だからさっきの取り消すなら、今だよ?」
義務とか責任で付き合われたって、悲しくなるだけ。
「あぁ…ちゃうねん。」
「え?」
「別に気にしてへんよ。
てか、何で気にせなアカンねん!」
あぁそう…。
「付き合うって言うたんは、女黙らせんのにはそれが一番やなって思って。」
「え?」
意味がわからなくて、聞き返すと、再び歩き出した透について行く。
「最近あいつら俺にも、お前との事聞いてくるし、ホンマうざくてさー。
どんだけ断っても、未だに告ってくるねん。」
さりげなく自慢ですか?
まぁ…確かにずっとそんなんじゃ、ストレス溜まるだろうな。
「やから、もうお前と付き合ってる事にしたら、俺も女から解放されるし、お前もいじめられへんやろ?
完璧やん♪」
いや…
透はともかく、私は微妙なんですけど…。
むしろ、余計みんなの怒りを買うんじゃ…。
「何、嫌なん?」
「………。」
…正直、
嘘でも“付き合う”という誘いに、よっしゃ!と思ってる自分がいる。
だって、どんな形でも、透のそばにいたいから。