シュガーレス

♪3



繁華街から外れた、その街を思い出そうとすると、


古びた商店街。


工場に囲まれた風景。


木造二階建ての平屋。


思い浮かぶのは、


そんなうす暗い記憶ばかりだと


彼は言った。


「母さんはもともと丈夫な方やなくてな。
それに加えて、工場経営がうまくいかんくなってもうてん。」


淡々と話す透が、


何だか、違う人に見えてくる。


「借金取りは来るわ、旦那は酒飲んで暴れるわで…

…疲れてもうたんやろな。」



もう、いいよ。


そう言いたいのに、


言葉が出ない。


そんな自分が


歯がゆくて、たまらない。




< 188 / 209 >

この作品をシェア

pagetop