シュガーレス
♪3
繁華街から外れた、その街を思い出そうとすると、
古びた商店街。
工場に囲まれた風景。
木造二階建ての平屋。
思い浮かぶのは、
そんなうす暗い記憶ばかりだと
彼は言った。
「母さんはもともと丈夫な方やなくてな。
それに加えて、工場経営がうまくいかんくなってもうてん。」
淡々と話す透が、
何だか、違う人に見えてくる。
「借金取りは来るわ、旦那は酒飲んで暴れるわで…
…疲れてもうたんやろな。」
もう、いいよ。
そう言いたいのに、
言葉が出ない。
そんな自分が
歯がゆくて、たまらない。