シュガーレス
放課後。
1人で帰る私の頭には
『けどさー馨ちゃんって、彼女いるのかな?』
という美里の言葉が、頭を回っている。
……………………………………
「先生こそ、“百合”って彼女の事だったんだね。」
化学室での雑用中。
頭に血が昇った私は、一番話題に出したくない“百合さん”の名前を出した。
「…うん。」
先生は照れたような、少し困ったような表情を見せた。
「いや、この前はビックリだったな!
そういえばお前の家、すぐ向かいだったよなー!
そりゃ見つかるってな!」
…やめて。
あははっと、笑う先生に私は言葉を返せなかった。
「大学から付き合ってるんだけどさ…」
ガタッ!と音を立てて、私は立ち上がった。
「…坂本?」
目を丸くする先生。
「気分が悪いんで…帰ります。」
そう口にするのがやっとで、私はふらつく足取りで歩き始めた。
「おいっ?!坂本っ!」
…やめて。
「ちょっと待ってろ!
送るからっ!」
強く肩を掴まれ、その痛さに顔を上げると、青い顔をした先生。
その顔を見た途端、胸が熱くなった。