恋は陽炎 ~道化師の初恋~
 返却カウンターにバッグを置き、四冊の本を取り出すと、「ありがとうございました」というお礼の言葉を添えて係員に差し出した。 
 係員は、返事もせずにバッグを畳んでいる亜美菜の手元を目で追っているようであったが、亜美菜は、綺麗に畳んで終わりにするつもりだった。 

「あのう・・・」

「はい?」 

 係員は何か言いたそうな顔をし、亜美菜から視線を外した。 

「何ですか?」

「また来ますよね?」 

「えっ?」

 亜美菜は係員の言葉の意味が分からなかった。
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