恋は陽炎 ~道化師の初恋~
 疲れ過ぎた心は、この静かな空間の中のみで癒されるのだ。音楽もテレビも無いこの部屋は、時折小さな子供が騒ぐだけで、それが過ぎるといつもの静寂な森となって青い空気に満たされる。道化師を捨てた亜美菜は、森の妖精のように静かに時の流れを感じ、破れかけた白い羽根を休めていた。

 時はあの出来事を過去へと追いやり、亜美菜の恋心もあの日を最後につぼみへと戻っていたのである。
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