ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
あの人は、いよいよ孤立して、もう決して誰も信じられなくなるかもしれない。


――そんなこと、できない。

黒川さんと戦うのはあたし一人で十分。


あたしは首を横に振った。


「……今日は体調が悪いだけだから」

「……ほんとに?」


薄茶色の澄んだ目で探るようにじっと見つめられて。

これ以上嘘をつける自信がなかったあたしは、ただ黙り込むしかなかった。


薫さんはしばらくじっとあたしを見ていたけど。

やがて小さくため息をついた。


「何かあったら、必ず言ってね」



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