ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「ミュージカル俳優の人。

40歳ちょっとの人なんだけど」

「ミュージカル? 何、最近そういうのに興味あるの?」

「ね、聞いてもらえないかな」

「聞くのはいいけど、せいぜいサインもらえるくらいだと思うわよ」

「じゃああたしが電話するから、連絡先教えて」


異様なまでのあたしの熱心さに気味悪がりながら、ママは山中さんの名刺を出してきた。


「……東京の人なんだ、山中さんて」

「そうよ。どこの人だと思ってたの?」


眉間にシワを寄せながら、面倒そうに言う。


「先にママが言っておくから、それから電話を入れてくれる?

いきなりだと変だと思われるから」

「わかった。早く連絡したいから、できるだけ早く電話入れて」

「もう……何なのよ。

明日の朝にでも連絡しておくから」


5日ほど後から始まる地方公演で、清水さんはこの辺に来るはず。

それを調べて知ってたあたしは、何としてもそれまでに連絡を付けたかった。

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