ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「しかし、柚希が黒川さんにプロポーズされるなんてねぇ」


ママはうきうきと言った。


「高校卒業と同時に結婚なんて、ちょっと柚希には早すぎるとは思うけど……まだまだ子どもなんだから。

でもまぁ、ママは反対はしないわよ。あんなマジメで素敵な人。

ちょっと年は離れてるけどねぇ。

で、もう返事したの? 今からデートでしょ」

「もう、そっとしておいてよ」


あたしは笑った。


「返事を求めてるわけじゃないんだって。

自分の気持ちをちゃんと伝えておきたかっただけだって、智弘さんも言ってたもん。

別に今すぐって話じゃないから」

「あらそう。

それはそれでステキね。黒川さんらしいじゃない」


ママはキッチンカウンターの向こうへ行きかけて、ふと振り返った。


「そういやこないだ、仕事先で山中さんに会ったわよ。

お嬢さんお元気ですか?って」

< 256 / 278 >

この作品をシェア

pagetop