ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
紙はどの紙が好きなのか。

あの画材にはあの紙。この画材にはこの紙。

色鉛筆はこういう絵にはこのメーカー。ああいう絵にはこっちのメーカーの方が合う。


だんだん話はマニアックになっていって。

普段、誰にも通じないからできないような話になっても、黒川さんには何でも通じた。

何を聞いても、丁寧に答えてくれるし。

どんな話でも通じるのがうれしくて、あたしはついつい喜んでぺちゃくちゃ喋ってた。

黒川さんが微笑みながら答えてくれる、その笑顔が何だかとてもうれしかった。


どんなときでも穏やかで丁寧な物腰を崩さない、黒川さん。

この人が声を荒げたり、不機嫌になったりするなんて、全く想像もできない。

本当に素敵な人。


あの最初のファミレスの別れ際に感じた奇妙な印象は、きっとあたしの勘違い。

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