あなたの”その”足元へ
一体何のことだ。

不届きな心理に陥ったこともあり、内心で動揺した。


「タオルケット。
 かけてくれただろう?」

「ああ、別に」


涼は視線を新聞に落とした。

なんだか沈黙が重い。


「涼。
 悪いんだけど、手伝ってくれる?」


見ると綺樹はピアスに、てこずっている様だった。


「はめるの?」

「ん」

「いいよ、かして」


手伝って欲しいといいながら、いまだ自分で格闘している指からピアスを取った。


「しばらくつけていなかったから、入りづらい」


綺樹がしかめっつらするのに、涼は微笑した。

年相応の可愛らしさじゃないか。

耳たぶをつまんで、その柔らかさに、思わず息が詰まる。

理性が追い込まれていく。

そっとひっぱり、ピアスを慎重に差し込む。

何気なく綺樹の顔に視線が移った。

少し伏せられたまつげが、白い頬に影を落としている。

肌の白さはやはり日本人離れしていて、だからくちびるの赤さが際立つ。

いつもだったら、ここでちょっと女の子の目をのぞきこんでから、くちびるを合わせていただろう。
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