泣き顔の白猫
加原は名波の言葉を信じると言ったので、ナイフの話が偽証だった前提で、物事を考えている。
つまり、誰かがわざと名波にナイフを拾わせて指紋をつけた、証拠捏造ということだ。
その点で見れば、鈴木たちの証言には、明らかに怪しいところがあった。
証拠が捏造されてすぐに浮上した証言。
妙に隙のない、スムーズな供述。
なにより“常に持っていた護身用のナイフ”の話なんて、ナイフにつけられた指紋の件を知らなければ、できるものではないのではないか。
報道では『ナイフ』と言っただけで、畑野優馬の傷がどれほどの大きさだったのか、凶器はどんなナイフなのかは、なにも伝えられていない。
持ち運べるような形状のものなのか、護身用といえる大きさのものなのかは、捜査員以外には、犯人しか知らないはずだ。
まさか、刃渡り十センチメートルもないオモチャのようなナイフで人を殺せるなんて、思い付くものだろうか。
そうなると彼らは、暗くて絡みづらいクラスメイトに迷惑をかけようとして、口裏を合わせて適当な作り話をしただけではなく。
小細工までして、本気で罪を着せようとした、ということだ。
そして、そこから導き出される答えは、一つだった。