泣き顔の白猫
ナイフから指紋が出た。
平河名波のものだった。
決定的な証拠を突き付けられてなお、彼女はほとんど顔色を変えなかった。
一週間ほど前に学校の廊下に落ちているのを見て拾い上げたが、オモチャかと思って近くの教室のゴミ箱に捨てた、と言った。
それが嘘であるという証明も、誰にも出来なかった。
しかし結果から言うと、平河名波は逮捕された。
あと十日ほどで二月も終わる、という頃のことだった。
名波は逮捕後もしばらくは冷静に否認を続けていたが、ある時を境に、急になにも言わなくなった。
弁護士相手にも心を開かなくなってしまったのだ。
その時、何が起きていたのかはわからない。
だがそれから二ヵ月ほど後には、彼女に懲役五年が言い渡されていた。
出所したのは、今年の三月の終わり頃のことだ。
そしてその四月から一月半ほどの間に、事件の証人――鈴木学たち四人、そして松前佳奈子が、次々と殺されている。
三年前の丸井の自殺は別件と見られているが、連続殺人は、名波の刑期終了直後から起きているのだ。
無関係であるとは、到底思えなかった。