スミダハイツ~隣人恋愛録~
「この前は、色々迷惑かけて、ほんと悪かったと思ってる。マジでごめんなさいでした」


頭を下げる榊。



座敷わらしは、つい先日の、榊と麻子の一悶着を思い出した。


しかし、社会人にもなって、そんな謝罪があっていいのだろうか。

それより日本人たるもの、誠心誠意の謝罪ならば、まずは土下座して、



「うっはー。榊が頭下げてるとか、超ウケるんだけど! 写メ、写メ!」


原始人のようなナリをしたミサが、謎の言語を操り、四角い機械を取り出した。


まったく、こいつらは。

座敷わらしは横でぐちぐちと言うが、もちろんそれが住人たちに届くはずもない。



ミサを無視した榊は話を進める。



「そんでまぁ、あれから麻子と色々話し合ったんだけど。俺ら、結婚しようと思って」

「えぇ?!」


一同と一緒に、座敷わらしも驚いた。

騒動が鎮静化したことに飽きて眠りこくっていたうちに、まさかそんな展開になっていたとは。



「マジで? ってことは、ふたり共、ここ出てくの?」

「いや、そういうことはまだ何も決めてないけど。ほんと、具体的なことはこれからで。でも、やっぱ一番にお前らには報告しとこうと思ってさ」


晴香は「おめでとうございます」と言った。

良太郎は「おめっ、おめっ」と言いながら、すでに泣きそうな顔をしている。


ミサだけが、渋い顔で腕を組んでいた。



「もったいないなぁ、麻子さん。何も、こんなのを選ばなくてもいいのに。人生を棒に振ったらどうすんの」


麻子は笑っていたが、榊がその言葉を受け流せるはずもない。



「てめぇ、丸焼きにするぞ、このヤリマンが!」

「はぁ? またそうやって、あたしを馬鹿にして! しかもあたし、もうヤリマンじゃないしね!」
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