座りの悪い盆(信州シリーズ1)

小百合

寝室では、床に臥しテレビを見ていたヨネが、
皆の笑い声に気付いてあたふたと起き上がり、
居住まいを正して正座して待つ。障子が開いて

清一と亜紀、後ろから小百合が入ってくる。
清一と亜紀があいさつをする。

「母さん、ただいま」
「おばあちゃん、こんにちわ!」

ヨネ笑顔で、
「ああ、おかえり、おかえり」

小百合、二人のリュックを抱えて、
「お荷物は奥の部屋へ運んでおきます」

ヨネと清一が同時に、
「小百合さん、ありがとう」

皆で笑い、小百合が礼をして出て行く。
清一が不安げにヨネにたずねる。

「母さん、元気?じゃないよね。どうしたんだよ?」
「朝、立ちくらみがしての。今日一日床でゆっくり
しとったんじゃ。もう大丈夫じゃ。亜紀の顔を見たら
元気が出てきたハハハ」

ヨネが亜紀の頭をなでて笑うと、
亜紀もにっこりと微笑んだ。
「小百合さんとヨシおばさんが交替で賄いに
来てくれているんでしょう」

「お前には連絡せなんだが、ちょうど一ヶ月ほど前に
ひどい喘息の発作が起きてのう、死に掛けたんじゃ。
そのときヨシに飛んできてもろうて助かった。

それからは一人じゃとても心細うてのう、わしから
頼んでこっちへ越してきてもろうたんじゃ」
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