平穏な愛の落ち着く場所

7.



穏やかな日曜の動物園

それなりの混雑ではあるけれど
それでも比較的ゆったりと歩いて廻れている

仲良し家族がいっぱいで、だっこされているパパの肩越しに後ろ向きでこちらを見る子供に、千紗はつい笑顔を向けてしまう。


『まま!おさるさん、いっぱい!』

同じように彼の肩越しに振り返る娘に
胸がいっぱいで幸せな気持ちに涙がこぼれそうになる。


紗綾のあんな無邪気な笑顔を見るのは
いつぶりかしら?

ううん、あんなにはしゃぐあの子を見るのは
初めてかもしれない


『サルサルーやばいー』

バタバタと駆けてきた三、四人の女子高生が、崇さんと蒼真さんを見て
《あのパパたち格好良すぎじゃない?》
とキャアキャア騒いでいる。


『ここへきて動物より目立ってしまうのって
 ある意味犯罪よね』

隣にいる夏音さんが肩をすくめた。

『蒼くんと出掛けるとあの人素敵って視線が そこかしこからたくさん刺さって
 一緒にいるとチクチクするのに』

猿山を見ていた蒼真さんがこちらを振り返って、甘い笑顔で夏音さんを見た。

『彼はほら、私をあんな瞳で見るから
 チクチクがグサグサになるの』

『蒼真王子の微笑みは健在ね』

私の口からポロリと出た言葉に、夏音さんが一瞬瞳を丸くしたあと、けらけらと笑いだした。


『あっ、ごめんなさい!』

プリンス四天王の代名詞?必殺技?
誰がつけたのかそんなものがあって
蒼真さんは向けられたら間違いなくとろとろに溶けてしまう極上の甘い笑みがそれ。


『あらまあ、ここにもいたわ』

『えっ?ここにも?』

『私は零士王子の寝ぼけ眼派よ、本なんて
 読まないのに図書館に行ったもの』

夏音さんが言う零士王子こと、
岬零士(みさきれいじ)さんには、彼特有の時間の流れがあって、朝が弱いのか休み時間
中庭のベンチや芝生で眠っている事がよくあった。
お互いの校舎の中間にある図書館からは中庭がよく見えたので、零士王子のファンはそこに鈴なりになっていた。


『うそっ!』

『千紗さんこそ崇王子の眼鏡じゃないの?』

実は崇さんは目が悪くて、普段はコンタクトなんだけど、学生時代 運動をしない試験期間中は眼鏡で過ごしていた。
メガネ男子萌えな子達はそれ見たさに
微妙にずれて休みだった試験期間も学校にきてたのよね。


『えーっと……蒼真王子も素敵だったけれど
 実は私、勇斗王子の右手派でした』

四人の中でも、一番人気のあった佐伯勇斗
さんはもうなんていうか、手フェチには
たまらない二の腕や長い指をしていて、
あの指が制服のネクタイを緩める仕草は色気がありすぎて、気絶ものだったのよ。


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