平穏な愛の落ち着く場所

大学に入って、この人を親友の冴子から
従兄弟だと初めて紹介された時の事が
昨日の事のように思い出される。

隣の高校に通う加嶋崇は、その友達を
含めた四人で、プリンス四天王と呼ばれ、
千紗の高校ではちょっとした有名人だった。

中でも彼は鋭い瞳を光らせて
いつもどこか危険な感じがした。

三人といる時以外は、ほとんど一人でいる
孤独な一匹狼……でも実際はちょっと違う。
彼が自ら好んでそうしていたんだと
後から知った。

大学に上がり、私は世間知らずなお嬢様で、
運転免許の取得に四苦八苦していた。

見かねた親友の冴子が、従兄弟は運転が
上手だからと、紹介されたのが崇だった。

遠巻きに見た印象に違わず、危険な香りの
する彼に運転を教わるなんて
ありえないと尻込みする私に
彼はびっくりするほど優しく、そして
根気よく教えてくれた。

お陰で冴子は浩輔さんとの賭けに勝ったし
(取れないと思った浩輔さんは失礼よね!)
免許証と一緒に彼は私の恋人になっていた。


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