平穏な愛の落ち着く場所

完全にフリーズしていた崇は
玄関へ向かう彼女を慌てて追いかけた


『待て!!!』


『もういいから!構わないで!
 同情なんてお断りよ!』


掴んだ腕は崇を振り返ろうともせずに
振り払われる。


『千紗、待ってくれ!』


崇はもう一度、今度は絶対に離すまいと
手を掴んで力を込めて握った。


『離して!』


『ダメだ!二度と同じ過ちは犯さない』


千紗が振り返ると、崇はその手を祈るように両手で握り締める。


『あの日、追いかけなかった事をどれだけ
 後悔しているか知らないだろ?』


千紗の手がビクッと震えた。


『嘘よ、あの日あなたは追いかけようとも
 しなかったくせに』


『ああそうだ』


『やっぱり馬鹿にしてるのね!』


『違う!馬鹿なのは俺だ!
 追いかけなくともおまえは戻ってきて
 くれると思っていたおめでたい馬鹿男だ』


『え……』


『俺の事なら声色一つで理解してくれる
 おまえなら、結婚を取り止めて戻って
 くると思っていた』


『う、そっ……』


『千紗、さっき言ったのは本気か?』


『どうかしら……』


『はぐらかさないでくれっ!』


『この間、夏音さんに言われたのよ、
 どうして崇さんじゃダメなのかって』


『それがなんだよ!』


『ダメじゃないって答えたわ!
 だってあなたを愛してるんですもの、
 そうしたら愚かにもあなたとの将来を
 考えてしまったのよ!
 だけどあなたはっ……んんっ!!』


抗う隙もなく唇が奪われた。

壁に押し付けられて、息もできないほど
強く荒々しいキスは、まるで吹き荒れようとしている嵐のようだ。


『崇さんっ…あっ……まって…』


その激しさにたじろぎ、握られていない方の
手を肩に当てて必死に彼を押し退けた。

『待てない』

苦しそうに肩で息をする彼の瞳が暗く情熱に煙っているのを見て、千紗の口から欲望の溜め息がこぼれた。

『あっ……』

千紗は再びキスされながら、その場に押し倒されて視界が霞んだ。

崇はブラウスをはぎとり、我を忘れて激しく彼女を求めた。

燃えるように激しい感情が、全身の血を沸き立てて駆け巡っている今、
これが夢だと言われたら、もう二度と立ち直れないだろう

細く白い喉元に噛みつくように唇を落とし
狂おしい感情に突き動かされるように
何度も彼女を求めた。



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