平穏な愛の落ち着く場所

『なんだか今日は楽しそうだね?
 何か良いことでもあったのかい?』

同僚の和田さんが笑っている。

『え?そうですか?』

『さしずめ、昨日の結婚式でいい男に
 出会えたとか?』

『そうですねぇ、いい男はいましたよ』

『おやまあ!』

『残念ながら、私には高嶺の花でしたけど』

『なに言ってんだい!まだ若いのに!
 あたしだって、まだ諦めてないよ!』

自分の母と同い年の和田さんは
いつも明るく私を励ましてくれる。

和田さんをお手本にしなくちゃ。
紗彩には、こんな母親が必要よ。


千紗のここでの仕事は、調理担当ではなく
メニューを考える管理栄養士。

大学時代に何となくとった資格が
まさかこんな形で役に立つとは、
思わなかったわ。

この本社の社員数は3000人ほど、よって
メニューもかなりの数が必要だ。
大方はシェフがそれぞれ考えている。

千紗は和田さんと共に
それぞれの栄養値を計算したり、
ヘルシーメニューの提案をする。

それと週に2日ほど相談コーナーに座って、
社員さんに食事面でのアドバイスや
設置されている機械で、骨密度を図ったり
するのが仕事だ。


『今日もイケメンが図りにくるといいね』

『もお、和田さんたら』

ここ数回来る、土木建築の佐々木さんが
私に好意を寄せていると和田さんは
思っているみたいで、からかわれている。

『彼の様な人には、私みたいなバツイチ
 子持ちより、ずっと素敵な方がいますよ』

『そうかしらね~』

そうよ、そうであって欲しい。
今の私は好意を寄せられても困る。

千紗は短くため息をついた。

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