B - Half
「ますます格好いい。穂波にはもったいない。

 ……って云うか、どうせ穂波につきまとわれているだけなんでしょう?

 あの娘、唯一の長所を容赦なく使いまくっているから」

「唯一の長所?」

「暴れ馬のような猪突猛進」

 さらりと、ミキさんはひどいことを云う。

「まあ、あのバカ娘を増長させない程度に付き合ってあげて。

 でも……ひとつだけ、お願いをしてもいいかしら?」

「できることなら」

 腐っても『猪突猛進』の穂波の母。

 予防線を張った俺に、ミキさんは苦笑した。

「そんなに警戒しなくても。簡単なことよ。

 あの娘と付き合わなくてもいいから、末永く友達でいてあげて。

 間違っても、突然消えたりしないで」

 真剣なまなざし。母親っぽい、穂波への情がほの見える。

「え……?」

 聞き返そうとしたときにはすでに、ミキさんは素早くテーブルを離れていた。
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