ベイビー&ベイビー
第7話



第7話


「…どういうこと?」

 俺は、わけが分からず目の前の明日香をじっと見つめることしか出来なかった。
 一方の明日香はというと、チラリと俺を横目で見て、温かい緑茶をすすっている。

 カコーン。
 ししおどしの音が静かに鳴り響く。
 
 明日香は、自分で考えなさいとばかりに無言を貫く。

 こうなったらもうお手上げだってことは分かっている。
 頑固者の明日香は口を開こうともしない、ということを。

 ということは、自分でなんとかひねり出さなくてはならないということか。
 俺は小さく息を吐き、目を閉じた。

 拓ちゃん。
 その呼び名にとても覚えはあった。

 長期休暇にあわせて京都の母方の祖母の家に遊びに行ったとき。
 毎回一緒に遊ぶ女の子がいた。

 しかし、その女の子は俺より年下のはずだ。
 明日香は俺と同じ年。

 あの女の子と同一人物な訳がない。
 しかし、どうも明日香は京都の祖母のことをよく知っているらしいし、俺がよく祖母に怒られていた内容まで知っている。
 と、なると。

 やはり、あの女の子と明日香は同一人物なのか。

 俺が考え込んでいると、目の前の明日香はため息混じりに小指を出した。


「絶対に私のこと、忘れないでね。約束!」


 そういう明日香を見て、淡い記憶が蘇って来た。
 
 もうなかなか京都の祖母の家に来ることが出来なくなる、そういったときにあの女の子と小指と小指を絡ませて約束しあった。
 確かに俺は、その女の子と約束した。

 では、目の前の明日香がそのときの女の子なのか。




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