氷を噛む
氷を噛む


暑い……熱い……
アツくてたまらない

灼熱の太陽なんて
綺麗な響きじゃない

もっともっと
ギラギラとした
ドロドロとした
タールのような太陽

その熱に浮かされて
アツくてたまらない
苦しくてたまらない

このままじゃ火傷する
大火傷してしまう

早く……早く
この火照りを治めたい

だけど雲は成りを潜め
照らされ続ける私は
悪臭を放ち溶けて行く



ああ……渇く……喉が渇く

ひび割れた大地が水を求めるように
ひび割れた私の心が水を求める

だけど
雨は降らない

見渡しても
どこまでも続く青い空
遠くで揺らめき立つ陽炎

私の渇きを潤すものは
どこにも……無い


見上げれば
ベランダで洗濯物が
ぬるくてゆるい風に揺られている



まるで……

まるで首吊りのよう……



そんな気持ちを飲み込む為に
私は氷を噛む

ガリガリと音をたてて氷を噛む


口のなか
砕けた氷は
私の喉を通過して行く

私の体内に飲み込まれる

そして溶けて行く


だけど私は渇いたまま……


ひび割れた大地に風が吹き
舞う砂塵

ひび割れた私の心に風が吹き抜ける


砂嵐になるのを抑え込むために
私は氷を噛み砕く



日常を「平凡な幸せ」ってやつとして保つために



私は氷を噛む

いくつもいくつも……

氷を噛む



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