鬼灯ノ夜叉



怖いモノを目にした時、人は目を閉じてしまえばいいと言うけれど、最近になって分かったことがある。

目を閉じればその先にあるのは暗闇だけ。

恐怖はより増すのだと。


知らないフリして、考えないで、見ないフリして。
この恐怖をやりすごしても最終的に待ち構えているのは――



そこまで考えて、少女は愛しい人の背中へ回しかけていた手を下げ拳を握った。
そのまま自分の懐に隠しておいた宝刀を取り出し彼の背にそっと宛てる。



「――――ごめんね」





止んでいた笛の音が一層高い音を奏で風に乗って耳に届く。
青年の咆哮が合わせるように轟き、舞うように髪を振り撒いた。

驚愕の表情を固めたまま崩れ落ちたその瞳を血まみれの手で閉じてあげる。

少女は笑った。
儚く、美しい笑顔で。
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