星の輝く夜空の下で


朱子は苦笑いをした


「どうしてって行く理由が無くなったからだよ」

「理由って何?」

「あたしがね、学校に通ってた理由は夏芽に人間の友達が出来るようになるため。もう春実ちゃんがいるんだからあたしは必要ないわけ」

「別にいいじゃん。今までみたいに一緒にいたって」

「あたしは幽霊だよ?幽霊とばっかり一緒にいていいことあったかな?」


春実は返す言葉がすぐ見つからなかった


「人間不振だった夏芽には人として大切なものを忘れないで生きてこれたかもしれない。でも悪いことの方が多くない?人間不振だって結局は幽霊が原因だし。人間の友達が出来たならもっと地上で楽しい時間を見つけて欲しい」


風が吹いた
朱子のなびかない髪
本当は交わることの出来ない存在
だけどそれが正しい答えなのか?
春実には分からなかった


「でも、あたしがいたってあたしが頑張ったってきっと夏芽は朱子ちゃんの事忘れないもん。あたしじゃ夏芽に空いた朱子ちゃんの存在は埋められないよ」

「最初から諦めるな。夏芽だっていつかはさよならしなきゃいけないって分かってる。今は分かってるけど忘れられない。きっとその狭間にいるだけだから」

「でも…」


何をしたらいいのか
朱子が夏芽から離れる理由を知った今、何をしてあげられるかなんて初めて本物の友達が出来た春実には方法なんか全く思い付かなかった

多分、朱子は春実の思いに気づいた
春実に自信が持てるように大切なことを一つ教えることにした


「夏芽が笑ったとこ何回見たことある?」

「え…?一回しかないけど」

「あたしもね、夏芽に出会って二年くらいになるけど三回しか見たことないの。しかもそのうちの二回は春実ちゃんの時笑った。夏芽はね、人間にしか笑わないの。あたしのために笑ってくれたことは一度もない」


春実は驚いた
それと同時に困った
朱子を越える存在になれるか不安だった


「春実ちゃんなら夏芽にとって大切な存在になれるから」


じゃあねと朱子は消えようとした


「ちょっと待って!!」


朱子は春実の声に振り返る


「最後に一つだけお願いがあるの」


朱子は首を傾げた


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