禍津姫戦記
 それは異国の神の名だったが、ワザヲギの民である姫夜にははっきりと聞き取れた。

(もしそれで兄さまの消息がわかるなら……)

 影は刻一刻と薄れて臭気が甘さを増している。もう迷ってはいられなかった。姫夜は意を決したように立ちあがり、影にむかって一歩進み出た。

 ――言霊ヲ!
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