禍津姫戦記
 二人は声にならぬ叫びをあげて、虹色の光のただなかに放り出された。
 とっさに二人は激流のなかで離ればなれにならぬようにたがいの腕をつかみあった。
 そのまま二人の体は虹の瀧のなかを《落ちて》いった。
 なんの前触れもなく、二人の前にゆらめく幻が現れた。それはそびえたつ真木柱と巨大な高楼をもつ宮であり、その高楼の上には、白銀の鎧をつけた背の高い男神と、長い裳裾(もすそ)をなびかせた女神と見まがう人影があった。
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