禍津姫戦記
「おまえ!」

 姫夜はその手の熱さに、目をみひらいた。大きな手から流れこんでくる力――まぎれもない命の熱と実在感が、姫夜を現(うつつ)の世に呼び戻した。

「大……事ない」

 姫夜は端麗な顔をしかめ、なんとか石柱にすがりながら立ちあがった。
 ハバキは、しばらくじっと姫夜をみつめていたが、やがて、深くなりまさっていく山あいの闇へ目をむけた。
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