禍津姫戦記
 姫夜が訊ねると、那智は目を伏せた。

「八握剣について、わたくしが聞き及んでおりますことは――」

 声が低くなり、一気に二十も三十も年老いたように見えた。

「姫夜さまの先々代にあたる神司(かんづかさ)が人を食うオロチを退治た折に、剣はその腹にのみこまれたと。オロチは二度とよみがえらぬよう、そのまま封じられました。以来、八握剣を見たものはおりませぬ」
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