禍津姫戦記
「そうか……」

 姫夜はうなだれてすわった。

「怒ったのか?」

「いや。だが……アゲハをだましてしまったような気がして。歌は命を削ってつくりだす言霊だから――」

 ハバキはしばらく姫夜の顔をみつめていたが、珍しくすなおにいった。

「そうだな。次に歌を作るときには自分の想う相手のために詠むことにしよう」

 姫夜はそのことばに胸を打たれたが、これからのことを思うと、ためいきをもらさずにはいられなかった。
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