禍津姫戦記
 山をひとつ越えた風ノ森の村には、あちこちに死者を葬る塚が築かれ、死体を焼く胸の悪くなるような臭いがいまだに漂っていた。

「あそこにございます」

 クラトが指さした先に、二本の杉の木のこずえに、断ち切られた太い藁の綱がゆらゆらとゆれているのが見えた。切り通しになっている細い道にはあきらかに馬と人とが踏み荒らしたあとがあり、木の幹には折れた矢が突き刺さったままだ。
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