溺愛MOON
『香月といたから気持ちが動いて、また書ける気がしてきた ありがとな』


短い文章に本当に小説家なの? と思わず呆れた笑みが零れる。


大体、私に小説家なんて一言も言ってないじゃない。

それなのに当然のようにこんな手紙を残すなんて、かぐやはやっぱり天然なんだろうなあと思う。


何気なくページをめくると次のページにもかぐやの言葉が残されていた。


『海の上にはいつも月が輝く』


そうだね。かぐや。

私たちはいつもそうして海を、月を一緒に眺めたね。


私が月であなたが海ならば、いつかあなたの海へ帰りたい。


あなたが暗闇でその道を見失うときは、私のことを思い出して欲しい。

優しい光で行く先を照らしてあげたい。


「ありがと……、七海……」


私はそっと手帳を胸に抱きしめた。
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