溺愛MOON
3年の契約期間を終えて、正社員への登用を目指すつもりだった。

こんなにも簡単に、不景気というたった一言で、私の夢は潰えた。


花形の職業に就いたって大手を振って田舎から出てきたから帰りたくない。

何なら親しくない子達は私が契約社員だったって事実を知らない。


恋人はいない。

追い討ちをかけるように学生時代の彼氏が結婚するって噂が私まで流れ着いた。

彼とは就職してから遠距離になって……、私の仕事が忙しすぎたのが原因で別れた。


貯金もない。

契約社員のお給料じゃ、生きてくだけで精一杯。

背伸びして揃えたブランド物のスーツとピンヒールは、結局使う機会もなくダンボールに詰められた。


正直、失業保険をもらえるまで3ヶ月も貯金がもたなかった。

必死で求人探しまくって、やっと見つけた仕事は離島の観光案内所だった。
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