溺愛MOON
かぐやに関わることで今の自分の立場を忘れたかったのかもしれない。

かぐやを救うことで自分も救われたかったのかもしれない。


良くも悪くも私の頭の中はかぐやのことでいっぱいだった。


その日の夕方、煮付けにした魚を右隣の部屋の前に置いてみた。

ネズミが何を食べるか知らないし、右隣は空き家とはいえ鍵がかかっていて入れなかった。


けれど、私にとっては「エサをあげた」という事実が重要だった。


これでかぐやに用事ができる。

ネズミが魚を食べたかどうか報告できる。


朝、出勤前に確認すると魚は皿の上で骨だけになっていた。

新発見。ネズミは魚の煮付けを食べる。


本当は島をうろつく野良猫達が食べたんだろうけれど私はそんなことは気づかないフリで興奮していた。
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