ソラナミダ
替え玉がどんぶりに入ると、晴海くんは嬉しそうに微笑んだ。
「…幸せそうだねぇ…。」
「…ん。うまいもの食べてるときって至福の時だよなあ…。」
…なるほど…、
確かに……。
イタリアンに、フレンチ…、
一般OLにはちょっぴり敷居の高い割烹…。
博信には…沢山の有名店に連れて行ってもらった。
どれもこれも美味しくて…
食べるのが勿体ないくらいに綺麗だったり……
感動の連続だった。
けれどそのたびに…
気後れしてきた。
大丈夫かな、
間違ってないかな、
浮いてないかな……。
なのに……
たった700円のラーメン一杯で、それに勝ると劣らない感動を味わえるなんて……
不思議だ。
……うん、
きっと……
相手があまりにも幸せそうに食べるから、それが伝染するのかもしれないな………。
「…で?略奪はしないのか?」
突然の店主のひと言に…
「…何でだよ、無理だって。」
彼は眉ひとつ動かさずに…
サラリとかわす。
「…いや、だってホラ、あれだよ。女の子連れてきたの初めてじゃねえか?」
「…え?そうなの?」
これには……
私も驚く。
「……あ~旨かった!……あ、ねえ…親父さん、そんなこと言っちゃあ駄目でしょ~?彼氏に誤解されたら大変なんだから。」
「………そういうもんか?」
「…そういうもんです。ねえ、平瀬さん?」
「……え。ははっ…、どうだろー…」
上手く言葉を返すことが……
できなかった。