ソラナミダ






「………寒いッ。」




師走の朝は、さすがに冷える。



霜降りのアスファルトの上を、慎重に歩く。



うっすら積もった雪は既に溶け……



間もなく訪れるクリスマスへの情緒は薄れゆく。




私はこの頃になると、毎日歩いて出勤する。



鼻のアタマが真っ赤になって、着く頃には『トナカイ』のようになる。



それをネタにして、同僚達と笑い合う。



そんな日常が…


好きだった。



いつもよりもゆっくりと流れる景色を堪能しながら、手袋をつけた手と手を擦りあわせて歩ることが…



好きだった。





夜になると、キラキラと光るイルミネーションを見上げることが……





好きだった。









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