恋なんてミステリアス
 本当は冷やしたほうが美味しいことは分かっているのだが、真理恵は包みの袋を丁寧に剥がすと、そのまま食い付いた。小豆あんに囲まれた軟らかい餅の感触が口の中で優しく溶ける。「やっぱり美味しい」
 真理恵は、誰も返事などしない狭い空間で大の字になると、帰省をした事が良かったのか悪かったのか分からなくなってきた。
 
 正月休み明けから一週間が過ぎると世間は普段の彩りに戻って、年の暮れに盛り上がった新年のカウントダウンなど過ぎ去った過去の何でも無かった単なる行事へと変化していった。

 久しぶりに鳴った電話は千夏からであった。 
 実際、本当の友達なのか真理恵には判断がつかない関係なのであるが、時折、こうやって電話をしてきてくれる相手は千夏以外には今は居なかった。
「どう?あれから新しい相手は見付かったりしたの?」 
「見つかるとか見つからないじゃ無いの。第一、見つけようなんて気が更々無いんだから」 
「そうかなあ・・・いかにも私は傷心中ですって顔してたけど」 
「そんな顔なんてしてないよ。で、どうしたの?」
 千夏は勿体ぶるような変な間を作ったが、我慢出来ないようだった。 
「良い男が居るんだよね。私の男友達の友達なんだけど、これがまたカッコいいのよ」
 真理恵はうんざりした気分になった。
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