クールな彼が好きすぎて困るんですが!!
「何があった?柚希らしくないよ」
「美喜ちゃん…」
「ま、どーせ山田くんがらみだろうけどね?」
やれやれと言った様子で、美喜ちゃんは肩をすくめて笑った。
美喜ちゃんには、何でもお見通しだな…。
「…昨日、山田くんとデートの約束してたんだけど」
「うん」
「待ち合わせの時間を一時間過ぎても、山田くん来なくて。…来る途中で、香里奈ちゃんっていう弓道部のマネに会ったらしくて、その子が熱出してたから家まで送ってたんだって」
「…うん」
「…でも、家に送るだけで一時間もかかる?遅れるってわかった時点で、何で連絡くれないの?どうして携帯繋がらなかったの?……そんな事ばっかり考えちゃって、理由もろくに聞かずに怒って……」
「…うん…」
「…もう、嫌われたかもしれないなって…。謝りたいけど、どうしても…香里奈ちゃんの事が頭を過って…」
「…うん、わかった。…もう喋んなくていいから泣くな。柚希」
気が付けば黒い水玉がスカートに広がり、鼻の奥がツーンと痛くなった。
美喜ちゃんは変わらず、穏やかな口調で諭すように言葉を紡ぐ。
「柚希はちゃんと反省してんだよね?」
「……」
声が出なくて、小さく頷いた。
その反動で、また一粒、雫が落ちる。
「なら良し。それで反省してなかったら私柚希殴ってたわ」
「……っ!?」
「あはは。冗談よ、冗談」
驚いて美喜ちゃんを見返すと、ケラケラと笑っていた。
ホッと気を抜いたあたしに、美喜ちゃんの言葉が胸を締め付けた。
「とにかく、真実を聞きなさい。理由じゃなくて、真実を。それでもし山田くんが浮気してたら、私が殴ってあげる」
ね?と言って、セーターの裾であたしの涙を拭ってくれた。
そんなこと言われてしまったら、余計に涙が出てしまう。
「…ありがと、美喜ちゃん…っ」
「はいはい。ほら泣き止め。柚希らしくないぞ」
美喜ちゃん…本当に、ありがとう…。