キミの前に夕焼け


暗い中、街頭だけが光る並木道を歩く。



いつも繋いでいる左手が空いている違和感も、もう慣れてしまった。



風がいつもより冷たいのも、月がいつもより虚しそうに見えるのも……


隣にキミがいないからで。





「あ、あそこだ……」




うちの学校よりも少しだけ新しい校舎と、特に何の変わりもない校庭。





「いけ、腕もっと振れ!」

「抜かせー!」


「バトンパスしっかり!」




リレーの練習をしている声が聞こえてくる。



暗いからよく見えないけど、選抜リレーのメンバーの颯くんも、きっとあの中にいるんだろう。




まだ終わりそうもないな、と思って校庭の近くのフェンスに寄りかかった。



携帯の時計を見ると、もう7時。



風もかなり涼しくなってきている。






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