横で眠る「あなた」【未完】
第35章
冬の海は、予想通り人がいなかった。
夏は、あんなにごった返すのが、今は不思議なくらいだった。

バイクを防波堤近くに止めて、浜辺へと降りた。
砂が靴の中に入ってきたが、気にしないようにして、歩いた。

ちょっと、歩きづらそうにしていたら、理先輩が、手を繋いでくれた。
その手をつかんで、波打ち際まで、歩いた。

冬の海だけあって、寒かった。
震えていた私の肩を、理先輩が抱き寄せ、コートを半分かけてくれた。
少しだけ、温まった。

そして、理先輩は「いずれ、僕は海の向こうにあるアメリカに留学するつもりでいる。」と話した。

「いずれって、どの位先のことですか?」と聞くと、「早ければ、高校卒業してすぐ。遅ければ、大学進学後か大学卒業後を考えている。」と言った。
私は、早ければ後2年後には留学してしまうという事に、軽いショックを受けていた。

「留学期間は、行ってみなければわからないんですよね?」と言うと、「そうだね。行ってみて、合わない場合もあるしね。長ければ、永住もあるだろう。」と理先輩は答えた。

この時に、私はこの人は男の人だ。
そして、年上なんだ。
もう、自分の将来を見据えて、動いているんだと思った。
そして、私は、この人に値する生き方が、できているだろうか?と自答した。

できていない気がした。
もっと、真剣に自分の将来を、考えなくてはいけないんだと認識した。
ちょうど、高校生になるこの時期は、最適なような気もしてきた。

そんな中学3年の新年の幕開けだった。
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