牙龍−元姫−








「おーい!早く来なよ!」




少しだけ前を歩く3人と差が開いてるのか手を大きく振り呼び掛けるのは模範生である〈橘寿々〉


手を振る橘寿々。それに吊られるようにして立ち止まる二人を見て少しだけ歩く足を早めた。


――――――しかし何故か七瀬庵だけはボーッとしていた。









「庵?どうした」





問いかける寿戒吏。しかし声が聞こえないのかボーッとしたまま。こんな庵は珍しい。そう寿戒吏は怪訝な表情を浮かべた。


そんな七瀬庵に―――‥‥‥‥‥











「――――――いたたたた!痛いって蒼!」





頬をつねる藍原蒼衣。


叩かれて手を離した頬は赤くなっていることから強めの威力だったことがわかる。そんな可哀想な程赤くなった頬を擦る庵。






「おめえがボーッとしてるから悪いんじゃね〜の」

「………」

「どうかしたのか庵」

「…―――いや。何でもないよ」






一瞬躊躇ったが何かを振り切るように、いつものように柔らか笑顔を見せた。その笑顔を見た二人は特に詮索する事もなかった。
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