牙龍−元姫−









+ + + + + +



そこからは思い出せない。



どうやって帰ったのかも。早苗のことも。ただ覚えているのは脚が地面からついてないような浮いている感覚だった事。ふわふわと浮遊している感覚だった。寧ろこのまま飛んで何処か遠くへ行きたいと思っていた気がする。



早苗に言われた言葉が余りにショックだった私は一週間寝込み学校を休んだ。食事も喉を通らず部屋に籠りっぱなし。



学校へ行く前日。私が虐めにあっていると勘違いした家族が怒り狂い学校へ乗り込もうとしたのを見て次の日は学校へ行った。










――――――ガラッ



緊張で汗に塗れた手を握りしめると深呼吸。そして恐る恐る教室の扉を開けたが―――――‥



シーン





「………お、おはよう」





数秒前まで喧しかった教室。しかし私が入るとざわめきが嘘かのように静まり返った。



それが居心地悪く感じた私は比較的小さな声で挨拶した。一週間も休んでいたら当たり前か、と目を伏せた。忘れられていたらどうしよう?なんて事を考える私に女の子が群がる。





「響子ちゃーん!」

「おはよう!」

「大丈夫だった?」

「本当サイテーだよね?見損なった」





我先にと私に近寄ってきた女の子たちに、少しホッとした。心配してくれていたみたい。でも徐々に交わされる言葉に疑問が沸き上がる。



‘あり得ない’
‘サイテー’
‘うざい’



―………なんのことかさっぱり分からない。私に言われてる言葉じゃないみたいだけど。





そして極めつけは‘早苗’という単語が出たとき。



そうだ……早苗は?



そう思い辺りを見渡すけど早苗らしき人物は見当たらない。まだ来てないだけなのかな?


そう解釈した私は横に立つ女の子に話し掛けた。



そしたら衝撃の言葉が返ってきた。









「アイツならもう来ないよ」





――――来ない?



なんで?



どうして早苗がもう学校に来ないの?



それに"アイツ"って……



この子と早苗は小学生の頃から仲が良かったはずなのに。


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