牙龍−元姫−

ある日の午後2〜西の狼と〜















『僕、キョオコさんのことがスキなんだ。』

『……えッ』



[ドキン]


期待に胸が高鳴る。


アキラ君がわたしのことを?



『ずっと僕が京子さんを守るから』

『アキラ君…』



指し伸ばされた手を取ろうとしたとき…



『待て!京子は渡さない!』



乱入してきた1人の男。



『誰だ!』

『俺だって京子のことがスキなんだ!テメェみてえになよなよしいヤツが俺の京子を守れるわけがねえだろ!』



それは先週わたしに告白してきたヒトだった。



『京子!俺を選べ!』

『え……っ』



そ、そんなこと言われても…っ



『京子さん!』

『アキラ君、』



ど、どっちかなんて選べないよ!



『――――なら俺様を選べば?』



ふと耳元を掠めた声。



『え……?』



誰……?と聞く前にわたしの体が浮遊する。



それは後ろから抱き抱えられ、お姫さま抱っこをされたから。



『きゃあ!』

『京子さん!』

『京子!』

『あはー。拐っちゃおーっと』



抑揚のない声で言う男。


わたしを誘拐じみたことをする男に二人は怒鳴る。


しかしそれを屁とも思わなっていないのかヘラヘラと笑う。



『貴方は誰…?』



わたしをお姫さま抱っこして走る男に聞く。


まるで結婚式場から逃げ出すウェディング姿の花嫁。



『オレは君の王子さま』

『王子さま?わたしの?』



小首を傾げて言うとイケメンの王子さまは漸く名乗ってくれた。



『ナガレって言うんだ』

『……ナガレさん』



知らない、


なんでわたしは知らないヒトに拐われてるんだろう。


しかもかなり怪しい…


怪訝な顔をするわたしを笑い飛ばして耳元で“ナガレさん”は囁いた。



『これから、ヨロシク』

『……っ』



甘い声で囁かれてドキドキした。



…正体不明の、わたしの王子さま





『(一体わたしはこれからどうなるの――――!?)』






【次回につづく】
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