牙龍−元姫−
気を紛らわすために食べ始めたラーメン。伸びきった麺に冷めた汁。しかし夏彦は食べれれば一緒だと思った。





『とりあえずゥ早く帰ってきてよ〜?夏彦ォ』

「ずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずる」

『麺啜る音煩ァーい!』

「ずるずるずるずるずるずる―――――切るぞ?僕は食べる事で忙しいんだ」

『はァ?ちょっと待っ』

(ぶちッ)





―――ツーツー



機械音が耳に届く。勝手に切った通話から流れる機械音が通話終了の合図を知らせる。



面倒臭い電話の内容に溜め息。メイド喫茶に戻りたいと心底思った夏彦。そんなことよりも今はラーメンに集中したい。





「ラーメンもう一杯。チャーシュー多めで」





追加したラーメンは今度こそ旨いうちに食べきろうと思い、電話の電源を切った夏彦だった。








―――方程式が成り立った。



“スリム=夏=夏彦”



あまり姿を表さない“夏”が意外にも身近にいるということは誰もしらない。



だって彼は肥満体。喧嘩なんて出来るの?そう誰しもが思い、憶測のままに春の片割れの彼は夏ではないと否定された。



そうして“夏”自体が謎に包まれていった。





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