牙龍−元姫−
耳にはじゃらじゃら付けたピアスが光っている。



半袖の体操着を肩までたくし上げ逞しい腕をさらけ出した彼。





「平良君!」

「え?あ、響子さん!」





ボロボロの平良君を見つけた。きっと牛と格闘していたんだと思う。先程牛から逃げるB組の平良君をグラウンドで見つけたから。



一緒に居た同じクラスらしき人達に一声掛けてニコニコと笑顔で駆け寄ってくる。





「どうしたんすか?響子さん。総長も」

「戒吏預かって」

「え゙!?」





突然の申し出に平良君はあからさまに顔を歪めた。



拒絶とかそういう類いではくて、困惑で。



“犬を預かって”みたいなノリで平良君に言ったから。そんな平良君に追い討ちをかけるように私は頼む。





「お願い。ね?平良君」





胸元でギュッと両手を握りしめて平良君を下から見上げてお願いする。瞳からはキラキラした光線が出ているはず。



平良君は「…うっ」と言い顔を赤らめ躊躇っている。



そしたら急に…



後ろから戒吏に引っ張られた。






「きゃっ、」





いきなり後ろに引っ張られ体勢を崩し、か細い声を上げた。



戒吏が支えてくれたので倒れる事はなかったけど。



―――――何?そう訝しげに戒吏を見つめると










「監禁決定だな」

「なんで!?」





いまの件(クダリ)に浮気する場面が何処にあったの!?しかし戒吏は当然のように言ってのけた。



私同様に平良君も訳が分からないと、自身の総長を見ている。
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