牙龍−元姫−

ルージュの思想

〔RIO SIDE〕





「今すぐピストル鳴らせ。ぶっ殺すぞ」



響子が震え上がっているのを見てパイプ椅子を蹴り上げる寿戒吏。中年教師の胸ぐらを荒々しく掴み畳み掛けた。



たまたま出くわしてしまった哀れな中年教師は悲鳴を上げピストルを持つ若い教師の元へ走る。







――――それを確認すると木から背を離して歩き出す。





「ホント、癪に障るわ」





あの男に響子を任せても大丈夫だと思える私が居る事に腹が立った。


寿は気に入らないわ。姿さえ見たくもないのに、木陰に隠れてまでその場に居たのは響子を見るため。


苛々する。かなり、苛々した。



―――きっとそれはあの男のせい。
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