獣は禁断の果実を蝕むのか。

今にも専務の鼓動が聞こえてきそうなくらい近いこの距離。


このまま、ひんやりとした胸に寄り添いたくなってくる。


「……あ…カゼ、引いちゃいますよ?」


何て話しかけたらいいか分からなくて。


動いたら専務の胸にピッタリとくっついちゃうし。


だから、ゆっくりと視線だけを専務の顔に向けた。


「……」


専務の視線はうつむきながら外を向いていて。


スッと私の手をほどいた。


それが何を意味するかは分かった。

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