獣は禁断の果実を蝕むのか。

小さくつぶやいた。


その甘い言葉に耳から熱くなって。


言葉を探すように、パクパクと口を動かした。


「いいんですか?」


それが、とっさに出てきてしまった言葉。


「それは、小松に聞きたい。」


ジッと見つめる瞳は、冷たいけどどこか温かかった。


「覚悟はできていると言ったはずです。」


しっかりと専務の瞳の中の獣に答えた。


「今、オレも覚悟は決まりました。」


フッと笑いながら、強く抱き寄せた。


今は、その言葉の意味を理解できないほど。


私は専務の腕の中の甘い香りに酔いしれていた。


< 276 / 387 >

この作品をシェア

pagetop